蝉
最近そんじょそこらに、ペチャンコになった蝉を、見つけます。
一週間啼きつづけ、力尽き、木にしがみつくことのできなくなった蝉が、
歩道に、それは秋の枯れ葉が舞い散るように、ヒラヒラと降りてきます。
仰向けに転がった蝉。
近寄ると、「ギー」と啼きました。
羽音に驚いたわたしは、足早にその場を立ち去りました。
なぜだろう、あの場にいるのが怖かった。
「ギー」は、叫びにも喘ぎにも聴こえ、すごい迫力でした。
全身全霊込めて啼いたような、力強い「ギー」でした。
彼はいま、何を考えているのだろう。
自分がもう死んでしまうことを、分かっているのだろうか。
あの場所にいたら、彼は人間に踏まれてしまうかも知れません。
手足で踏ん張れず、辛うじて羽の力で動き回る彼に、
再び大空に飛び立つ勢いはありません。
彼はそのとき、何を考えていたのでしょう。
帰り道、彼の姿を見つけることは、できませんでした。
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